鹿篙のコーヒー品種について

文/高郁淳
日月潭精品咖啡(Sun Moon Lake Specialty Coffee)は台湾・南投県魚池郷に位置しています。実は日月潭は景色が美しい観光地であるだけでなく、農作物にとっても“頼れる味方”なのです。この地域は日月潭のおかげで水分が豊富で、昼夜の気温差が大きく、湿気が朝露となって凝結しやすい環境です。冬でも朝霧が立ち込め、コーヒーの葉には露の粒がきらめきます──この環境がコーヒーの樹の成長にとても良い条件を与えています。
さらに、魚池郷の土壌の多くは弱酸性の赤土で、コーヒー栽培に最適です。鹿篙の住民によると、日本統治時代、鹿篙茶廠(紅茶工場)の周辺ではすでにコーヒーが栽培されていたそうで、鹿篙は紅茶の故郷であると同時に、当時すでにコーヒーの香りが漂っていた土地でもあります。

鹿篙でよく見られるコーヒー品種
初期の台湾のコーヒー樹は日本から導入されたもので、多くがティピカ(Typica)種でした。
細長い豆で、口当たりはまろやか、軽い酸味と濃厚な香りを持ち、滑らかな甘みの余韻が特徴です。鹿篙で最も多く栽培されているのもこの品種です。
約10年前から台湾ではコーヒーのカッピング評価制度が広まり、当時のコンテストでよく入賞していたのがSL28、スマトラ・ティピカ、卓武一号などでした。
しかし後のDNA検査によって、これらの多くがSL34であることが判明。果実は大きく、収穫量も多く、台湾の環境に適しており、プラムのような酸味、黒糖の甘み、紅茶のような後味を持つ品種です。鹿篙では2番目に多い品種です。
近年ではゲイシャ(Geisha)種も人気上昇中です。弾丸のような形の果実で、ライチの香りを持ちます。鹿篙でも少しずつ栽培が増えており、花の香りや柑橘系の風味が特徴で、花のような芳香が口の中に広がる印象的なコーヒーです。現在、市場で最も高価な品種の一つとなっています。
品種が異なれば香りや個性も異なります。
また、同じ品種でも栽培環境によって風味が変化します。
それこそが“テロワール(風土)”による味わいの違いであり、優劣ではなく、土地ごとの味を感じ取ることこそがコーヒーを楽しむ醍醐味なのです。



コーヒー抽出の豆知識
ハンドドリップ(手沖咖啡)
ドリッパーを使ってコーヒーを抽出する方法。器具や注ぎ方で味わいが変化します。
日月潭のコーヒーでは、多くの農家がハンドドリップで提供しており、軽やかな果実酸とすっきりした後味、クリーンな余韻を楽しめます。
手軽で奥深く、探求しがいのある抽出方法です。


エスプレッソ(義式咖啡)
高圧で短時間に濃縮液を抽出する方法。
台湾のコーヒーは中浅煎りが多く、酸味が明るく出やすく、ボディ感がやや弱くなる傾向があります。
バランスを取るのは難しいものの、紅茶や果物と合わせるアレンジドリンクのベースとしては最適で、爽やかな味わいが楽しめます。
サイフォン(虹吸咖啡)
真空状態を利用して抽出します。下のフラスコで水を沸騰させ、蒸気圧で上部に水を押し上げ、コーヒー粉と混ぜます。
抽出後、熱源を外すとコーヒー液が下に戻ります。
香り豊かでまろやか、厚みのある味わいになり、中深煎りのウォッシュドコーヒーに向いています。


モカポット(摩卡壺)
下室に水、中間に粉をセットし、沸騰時の圧力で水をコーヒー粉に通して抽出します。
ヨーロッパでは家庭でエスプレッソを淹れる最も一般的な方法で、いわば“簡易版エスプレッソ”。
中煎りの豆に向いており、酸味と甘みのバランスがよく、長い余韻が楽しめます。
コーヒーメーカー(美式咖啡機)
便利で安定感のある方法ですが、味の調整幅は狭めです。
時間がないときに手軽に淹れたいオフィスワーカーにぴったり。
「ハンドドリップ風」と表示されている製品もあり、味わいもそれに近いです。
台湾のコーヒーをこの方法で淹れるとやや軽めになりますが、中浅煎りの豆を使えばお茶のような香りと余韻が魅力的です。


エアロプレス(愛樂壓)
注射器のような形状で、粉とお湯を入れて軽く混ぜ、押し出して抽出します。
構造がシンプルで壊れにくく、洗いやすいのでアウトドアにも最適。
繊細な風味を保ちながら滑らかな口当たりと甘みを引き出せるため、多くのコーヒー愛好家が旅の必需品としています。